もし突然、” 花嫁さん ” と電車の中で乗り合わせたなら・・・
またしても、『阪急電車』で引っ張ります。
もし、花嫁姿の女性と偶然に、
電車の中で居合わせたとしたら、
皆様はいったいどうお感じになりますか?
映画『阪急電車』には、こんな場面があります。
突然、純白の花嫁衣装を身にまとった女性が一人、
電車の中に乗り込んできます。
そこへ、宮本信子が扮するお婆ちゃんと、
彼女のお孫さんが居合わせます。
お孫さんは『あっ、お嫁さんだ』と呟きます。
しかし、お婆ちゃんは言います。
『あれは、お嫁さんじゃないのよ』
この段階で、お婆ちゃんは全てを見抜いています。
花嫁姿の女性の身の上に起こった出来事を・・・。
私なら、見抜けないと思います。
せいぜい、映画か何かの撮影でもあるのか、
と思い浮かべるくらいです。
恐らく、男性で、これを見抜ける人は皆無に近い
でしょう。 いや、同性である、女性であっても、
見抜ける人は少ないかもしれません。
それなりの経験を積み、上手に年齢を重ねた人
じゃないとまず理解出来ないと思います。
お婆ちゃんは“車内の花嫁さん”に声を掛けます。
『討ち入りの成果は、どうだったの?
・・・・・。
よかったら、話してみない?
単なる、通りすがりの野次馬に・・・。
気が楽になるわよ。
それとも、他人に話すなんて、嫌かしら?』
なんという、想い遣りに溢れ、
含蓄を含んだ問いかけであろうか・・・。
(特に、“討ち入り”なんて言葉、
まず出て来ないはず)
これ以上のセリフはあり得ない。
私は本気でそう思っている。
この後に続く、二人の会話も秀逸である。
私がここで、その会話を書きはしない。
興味がある方は、この続きをぜひ映画で観て、
ご自身で確かめてほしい。
大げさにいえば、優れた作家というものの、
本物の実力の程がわかると思うから。