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シンプル・イノベーション (Simple Innovation)

複雑で込み入った事象の単純化にトライ & 新しい発見を楽しむブログ by こうのすけ

それは反比例ではなく、効率と優しさはイコールだという話

イノベーション 無名の人で、偉い人

定刻の19時を少し過ぎてから、

その夜の講習が始まろうとしていた。

主に社会人対象のセミナーであった。

ゆえに、聴講生の全員が揃うには至らず、

まだ少し空席が目立っていた。

あと20分もすればこの会場(といっても教室

だが)は、ほぼ全員が揃うに違いない。

50代後半と思われる男性講師も、

その辺りは心得たもので、

欠席者のことなど知らぬがの如く、

余裕の表情を浮かべながら檀上に立ち、

自己紹介を兼ねながら、

この日の授業を始めようとしていた。

 

私がこのセミナーに参加してからすでに数週間

を経過していた。

講演はレギュラー陣の講師と、

ゲストの講師とで編成されており、

今夜の講師はゲスト・・・つまり、

私たち聴講生にとっては、

初めての授業であった。

先生は、ホワイトボードに慇懃(いんぎん)に

ご自分の名前を書き終わると、

一言二言挨拶をされた。

そして、しばし沈黙・・・。

やがて、あろうことか、

先生の両目から涙が溢れ出し、

両の頬を伝って落ちるのが見えた。

そして、先生は初対面である我々に向かって、

このように発言された。

 

「私は、皆様にお会い出来てとても幸せです。

 この世界で、皆様と今日お会い出来たこの

 御縁に、と、とても感動しています・・・」

 

━━━━この話は、今から26年前、

1989年の暮れのことだったと記憶する。

(私も歳を取ったものだ)

ことわっておくが、このセミナーはアチラ系の

怪しい類のものでない。

もちろん、私もそれなりに精神世界系や多少の

オカルト物には多分に興味を持つ人間であった、

のは事実だが、しかし、このころには、

そういった代物とは縁を切っており、

そういうものを頭の中から意識的に排除してい

た時期だった。

 

なぜって、それは、1989年だったからだ。

つまり、バブル時代の頂点期・・・。

この年の暮、日経平均株価は39,△〇◇の最高

値を付け、日本経済は絶好調であった。

 

(米国の一部勢力は、「裁定取引」という日本人

には馴染のない取引形態を日本の株式市場に

導入してひと儲けようと虎視眈眈と窺ってい

たのであったのだが・・・)

 

土地に関しては、大蔵省による総量規制など、

土地高騰を抑制する動きもあったにせよ、

まだ土地神話を疑う者などほとんどいなかった。

この時代に、精神世界もスピリチュアルもない。

といっては、言い過ぎかもしれないが、

少なくとも、私にはそんなものは忘れ去ってし

かるべきものと考えていた。

そんなものを信じて、ナンボ儲かるの?

というのが実感であったのだ。

 

だから、この日、初対面であったこの講師が、

御縁がどうしたと言って涙を流したのを見て、

私は酷く興醒めしてしまったのである。

ゲッ、勘弁してくれよ・・・である。

 

ところが、この日、

教壇に立たれた人物が話された内容は、

意外にも私には忘れ難いものとなった。

先生が話されたことを全部覚えているわけで

は勿論ないが、話の内容は恐らくは、

概ね次のようなものであったと思う。

 

「では皆さん、仕事というものはダラダラや

るよりも、テキパキと効率的にやった方がい

いです。 いわゆるデキる社員とは、

仕事が早くて正確な人を指します。

そいう人は計画性がありますし、

段取り上手ともいえます。

事前の根回しなども怠らないとすれば、

様々な仕事を同時並行で処理してしまいます。

鮮やかなものです。

 

会社の方もこういう人を評価しますから、

このような社員の給料を上げたりします。

そして、こういう社員ばかり増えれば、

会社としては理想的ですので、

こういうデキる社員を増やそうとして、

やれマニュアルを作ったり、

各人の個人目標とやらを設定したり、

それに合わせて査定のやり方を複雑にしてみ

たり、つまり、業務のシステム化を図って、

効率的な職場造りを目指すことが往々にして

行われます。

 

ところが、残念なことに、多くの場合、

このようなシステム化はうまくいきません。

なぜだか、わかりますか?

(ここで、生徒の意見などを聞く)

 

はい、それでは・・・・、

ところで、『効率』っていったい何でしょう?

具体的にどういうことを指すのでしょう?

皆さんも、出来るだけ効率的に働いて、

成果を出そうとお考えのようです。

それはそれとして、

ここでは、『効率』と呼ばれるものについて、

少し立ち止まって考えてみましょう。

 

たとえば、『効率が良い』とは『能率が良い』

と同じ意味だと思います。

つまり、出来るだけ短時間で、

成果を上げようということでしょう。

さらに、次々と仕事をこなすためには、

出来るだけ無駄な労力を浪費しない方が望ま

しいのは勿論です。

いちいち疲労しているようでは、

次から次へと仕事をこなせませんから。

まあ、最小のエネルギーで、しかも、

最短時間で成果を上げようとします。

こういうことを経済学では、

「生産性を上げる」といっております。

 

そして、当然のことながら、

従業員の数でいえば、

出来るだけ少ない人数で、

多くの売上なり利益を上げた方が、

会社にとっては効率が良いと言えるでしょう。

つまり、「従業員1人あたり売上高」という

のを計算して、その額が同業他社の数字と比

べて、自社が効率が良いのか悪いのかを判断

したりします。同じように、

「時間あたり売上高」を計算して、

時間的な効率を考えたりします。

また、「総資産利益率」や「総資産回転率」と

いう指標を使って、

その会社がどれだけ効率的に儲けを出してい

るのかを見たりします。

 

とまあ、固い話になりましたが、

私も一応セミナーをやっていますので、

これくらいのことは言わねばなりません。(笑)

・・・あの、資本主義というのはですね、

結局は、「効率の競争」です。

可能な限り、効率良く儲けた者が勝ち。

実際、「総資産利益率」が高い会社の株は、

やはり高いのが通例です。

 

ところで、日本の製造業のトップ企業は、

トヨタ自動車といわれております。

トヨタは無借金経営ですしね。

「Just In Time」というのも有名ですね。

つまり、カンバン方式というものです。

かんばん方式とは、簡単に言ってしまえば、

作り過ぎ、運び過ぎといったことで起こる、

中間品などの在庫過多を抑制する管理方法です。

ですから、一度に多量に生産せずに、

必要なときに、必要な量だけを生産します。

また、当然のことながら、

トヨタ自動車が購入する部品などについても、

一度に多量に買って在庫するということも、

基本的にないわけです。

かんばん方式は、日本ばかりでなく、

諸外国にまで、極めて効率的なシステムとして、

広く認知されるに至っております。

 

さて、これからが本番です。

トヨタかんばん方式・・・これがあまりにも

有名になり過ぎてしまい、今やどこの会社もが

マネするようになってしまいました。 

もちろん、製造業だけではありません。

スーパーマーケットもコンビニも、

かんばん方式を取り入れています。

すなわち、売れるモノを、必要な時に、

必要な量のみ、陳列、あるいは、在庫する、

という方法です。

 

ところで、皆さん、

皆さんが街でコンビニを経営するならば、

どうされるでしょうか?

やはり、厳格にかんばん方式を貫きますか?

あるいは、先に申し上げた、

「従業員1人あたり売上高」とか、

総資産利益率」や「総資産回転率」という

をかたくなに追求されるのでしょうか?

 

ここで、ひとつ、

考えてみてほしいことがあります。

この街のすべての経営者が効率のみを優先し

たとすれば、どういうことが起こりますか?

つまり、スーパーのA社、B社、それから、

C社、D社、加えて、コンビニのE社、

F社、G社・・・。

これらの会社が一斉に、

効率のみを優先した納品体制を取れば、

いったいどうなってしまうでしょうか?

極端にいえば、各社が1時間ごとにカップ

ラーメンを納品するよう運送会社に厳命し

たとするならば、街はどうなってしまうの

でしょうか?

きっと、街の道路はトラックで溢れ、

大渋滞となり、ニッチもサッチも行かなく

なってしまいますよね。

はたしてそれは、

効率的な社会と呼べるのでしょうか?

なぜなら、そうなってしまっては、

道路はトラックだらけで身動が取れず、

その当然の帰結として、

時間通りの納品など、

誰も出来なくなるでしょう。

これでは、結局は、誰もが被害者になってし

まいます。 皆がよーいドンで、

やみくもに効率を追求すれば、返って、

効率は遠のいてしまうのです。

 

どうやら、モノゴトには限度があると考えて

よさそうです。

過ぎたるは及ばざるが如し・・・ともいいます。

では、効率を考えない方がいいのかというと、

それも違うと思います。

ダラダラ働いて、儲けが出なければ、

会社が潰れてしまいます。

それでは元も子もありませんね。

ではどのように考えるべきでしょうか・・・。

 

私は次のように考えます。

 

(先生はホワイトボードに何やら書き始めた)

 

・・・ 効率 = 優しさ ・・・

 

真の「効率」とは、

私は「優しさ」のことだと考えます。

先の例でいうと、

1時間置きに納品しなければならないトラック

の運転手の辛労はいかほどでしょうか。

配達先が何件もあれば、

はたして彼らに休憩時間があるでしょうか。

店の従業員だって、苦痛だと思いますよ。

違う商品ならまだしも、

たとえば、カップラーメンや、

ドリンク類が1時間置きに配達され、

それを荷受する日々が続いたとしたならば、

きっとアホらしくて嫌になるはずですね。

 

トラックで配達する人だけではありません。

従業員や仕入先に対しても、

私はお客様同様に大切した方がよいと考えます。

なぜなら、その方が効率的だからです。

社員が辞めたくなるような会社は、

不効率な会社といえます。

 

少し想像してみてください。

社員がやめると、その人の住民税や社会保険

ことで、所定の役所への手続きをする必要があり

ます。 それから、新入社員を募集するのも、

決して楽な作業ではありません。

リクルートなどで募集しなければなりませんし、

それには、ウン十万もかかってしまいます。

決してバカにならない出費です。

そして、応募があれば履歴書をチャックし、

面接もしなければなりません。

そして、採用となれば、また役所へ届けます。

仕事を覚えてもらうために、

1ヶ月は研修が必要かもしれません。

戦力になるまで、時間も費用もかかります。

こんなことなら、社員には出来るだけ長く、

そして気持ち良く働いてもらった方がいいです。

 

これは、福利厚生を充実させる話とは違います。

もっと、根本的な話です。

福利厚生という餌で、

社員を釣ろうとしても無駄です。

なぜなら、人間は飽きる動物ですから、

豪華な何かの施設や、海外旅行など、

いつしか当たり前と思うようになるからです。

 

以上、今日は勝手なことを申しました。

最後に、一言だけ。

自分も大切てすが、

出来れば周りの人達にも目を向けてほしい

のです。

思い遣りの心で以って・・・。

そうすれば、

たくさんの人達が効率的に仕事ができ、

充実した人生を送れるかもしれないのですから」

 

 

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※長文でした。

 お読みいただきありがとうございます。