探し物はなんですか、片方のスリッパが見つからない話
朝起きると、片方のスリッパが見つからない。
昨夜までは、確かに履いていたスリッパ・・・。
いったいどこへ、消えてしまったのか。
とはいえ、そのうち、出てくるだろうくらいに
考えるのが男。
どこへ行ったのかと訝しがり、
徹底的に探そうとするのが女。
私は幼少のころから、不思議なことが大好きで、
やれ、超能力やら、四次元やら、バミューダ海域やら、
そんな類の本を読んでいた。
だから、片方のスリッパは四次元の世界へワープした
のではないかと、ニタニタしながら想像したりする。
それから、井上陽水の昔の歌も頭に浮かんだ。
『夢の中へ』という曲だ。
「探し物はなんですか、探すのをやめたとき、
見つかることもよくある話で、
踊りましょう、夢の中へ、行ってみたいと、
思いませんかぁ♪」
探すのをやめたら、そのうち見つかるさ、
と決め込んで、探すのを完全放棄する愚夫。
一方、あちこちをひっくり返して、
探し続ける妻。
それでも、やっぱり、スリッパは出てこない。
小一時間して、妻は掛布団をひっくり返す。
すると、スリッパが床に落ちてきた。
妻は、スリッパを愚夫に投げて寄こす。
「ほらー、ここにあったじゃない」
だがしかし、その掛布団は、
私が二度もひっくり返しては畳み直し、
しっかりチェックしたはずだった。
なので、スリッパは本当に四次元へ行って、
そこからまた戻ってきたのではないかしら、
などと考えてしまうくらい、
愚夫はどこまでも、いい加減で、
デタラメな男であった。