眼瞼下垂の手術後、私にオーマイガッー!と叫んだ女
かれこれ10数年前のこと、
眼瞼下垂(がんけんかすい)の手術を受けた
ことがあった。 眼瞼下垂とは、いわゆる、
まぶたが腫れぼったくなり、下に垂れ下がって
くる様をいう。 俳優で、岸部一徳さんという
方の、あの重苦しい(失礼)まぶたを思い出し
ていただければ、だいたい想像がつくだろう。
その日、左目まぶたの手術を終えた私は、
左目に眼帯を掛け、そしてサングラスをして、
新大阪駅構内を歩いていた。
今の新大阪駅はずいぶんと小奇麗になったが、
当時の同駅は西の玄関口としては、
あまりに汚く、侘しく、貧相であった。
私は時間潰しをかねて、適当な喫茶店を物色
するなどしていたのだが、ちょうどその時、
ある店の入り口付近に座っていた人と、
目と目が合ってしまった。
その人は、たぶん旅行者で、
ヨーロッパから来られた女性と見受けられた。
その女性が、なんとなしに私の顔を見上げる。
私は眼帯にサングラス。
恐らく、異様ともいえる顔立ちであったのだろう。
女性は思わず口をすぼめ、
両手を自分の頬に当てたかと思うと、
次の瞬間、口を大きく動かした。
しかし、声は聴こえない。 聴こえないが、
確かに女性が叫んだように思えた。
『Oh! My God !!!』
そんなサイレンスな絶叫が、
私には確かに届いたような気がした。
私は恥ずかしさのあまり、
足早にその場を立ち去ったのは勿論だが、
今から考えれば、その女性にツッコミを入れて
おくべきだったと後悔している。
『あんた、今、”Oh! My God !”って、
言ったやろ!』
私がそう問うたとすれば、彼女はいったい何と
答えたであろうか?
彼女のコメントの如何によっては、
今書いているこのブログ・・・、
本当はもっと面白いモノが書けたのではないか、
などと、実は悔やまれてならない。