シンプル・イノベーション (Simple Innovation)

複雑で込み入った事象の単純化にトライ & 新しい発見を楽しむブログ by こうのすけ

持って生まれた才能が違うと身に染みて・・・努力することを放棄した話

以前、ある人が書いていたことだ。

その道の一流になるためには、

スポーツ、武道、音楽などに係わらず、

幼少の頃から取り組んでいなければならない。

中学生、高校生から始めたとしても、

それでは遅すぎるのだ。

決して、一流にはなれない。

 

この傾向は残念ながらというべきか、

年々強化され、深化しているように思う。

テニスの錦織選手しかり、

スケートの羽生選手しかりだ。

 

私の住む街には、いくつかのダンスクラブがあり、

そこへ自分の子を通わせる母親達と、

まだ幼い子供たちの姿が多く見られる。

 

━━━競争とはなんだろう、とあらためて思う。

学校、すなわち、勉強だけで競争することだけが

能ではないのは確かであろう。

人はそれぞれに個性があるし

向き不向きの方向性は違って当然だ。

 

こんなことを考えていると不意に思い出した。

私は小学生のとき剣道を少々やった。

(あれっ、野球と、ビートルズが、

全てじゃあなかったっけ?)

恥ずかしながら、現千葉県知事が昔主演していた

テレビドラマ『俺は男だ!』に感化されて、

竹刀を握ったクチであった。

 

私が通った市営の道場には、

同学年で天才的な剣士が一人いた。

その男子を仮にSとしよう。

Sは運動神経抜群であった。

体操部所属でもないのに、

オリンピックの内村選手ばりに、

助走なしで、空中バク転が出来た。

(手を床に着けないで、空中でバク転した)

全身バネのような彼だから、

剣道のスタイルも他の子供達とは全然違った。

 

Sの得意技は(正確なワザの名称は忘れたが)、

『引き胴』というものだった。

接近戦から、一気に振りかぶり、

見事に相手の胴を打ち、そのまま、

“自分の後方”へ飛び跳ねるのだ。

(胴を打ち抜いてから、相手の後方へ抜けて行く

 のではない)

飛び跳ねるといっても、

2・3歩後ろへ下がるなんてケチなものではない。

バッと跳んだかと思うと、弾力をそのままに、

10メートルくらいは後方へ弾んで行くのだ。

いや、勢い余って、道場を一周してしまうことも

稀にあった。

もう、観ている方は唖然とする他ない。

それでいて、相手の胴を確実に仕留めている・・・。

このワザは、道場の先生を含め、

誰にもマネ出来ないものであった。

 

私はSと稽古を含めて、何十回と闘ったが、

Sから1本も奪えなかった。

普通、マグレでも、籠手(こて)ぐらい入るもの

だが、Sはそれさえも許さなかった。

一部の隙もなかった。

 

これぐらい強いSであったから、

私は清く剣道をやめる決心が出来た。

私の敵う相手ではない。

もはや、努力云々とかの次元ではない。

持って生まれた才能の違いだと観念した。

 

Sはいま、どうしているのだろう。

中学、高校と進んだSは、

剣道の世界では段トツの強さを誇ったとは、

風の便りに聞いていた。

しかし、街の道場以来、Sに会うことはなかった。

その後、Sはどのような人生を送ったのだろうか。

 

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