シンプル・イノベーション (Simple Innovation)

複雑で込み入った事象の単純化にトライ & 新しい発見を楽しむブログ by こうのすけ

なぜか、猫に追いかけられてしまった話

つづけて、たっちゃんのことを書きます。

 

ある日、私はタバコを買いに家を出でました。

もう日暮れ時で、

辺りの家々には、闇が薄らと迫っておりました。

 

歩を進めていると、後ろで気配を感じました。

振り返ってみると、なにやら動く黒い影が・・・。

じっくり目を凝らせて見ると、

それは、たっちゃんでした。

 

考えてみると、たっちゃんは、

外の世界の私を知りません。

いったい、どこで、何をしてるんだか・・・。

家のなかでは、いっしょに遊んだり、

眠ったりしてはしていても、

たっちゃんにとっては、

外の世界の私はきっと謎の人物のはず。

恐らく、たっちゃんは出かける私の跡を付けて、

私が何をするのか確かめようとしたのでしょう。

私はそう考えました。

 

ところが、私がたっちゃんに近づこうとすると、

たっちゃんは逃げるのです。

どうせなら、一緒に外を歩いて、

私が煙草を買う姿でも見せようとした私は、

なんだか拍子抜けしました。

 

たっちゃんは、草むらの中に入ったまま、

出てきませんので、

私もあきらめて先を急ぐことにしました。

すると、またしても、たっちゃんの黒い影が

私を横切り、追い越して行くではありませんか。

そして、たっちゃんは、

すぐそこにある電信柱の陰に隠れました。

 

たっちゃんの尻尾が電子柱からはみ出ています。

私が「たっちゃん」と呼んでみると、

尻尾がピクンと反応します。

だから、そこにいるのはたっちゃん。

「頭隠して、尻隠さず」という諺がありますが、

この時のたっちゃんが、正にそれでした。

いや、胴体隠して、尻尾隠さずかな・・・。

 

こうなったら、私もたっちゃんを捕まえてやろ

うという気にもなってきます。

私は電信柱に向かって、

慎重ににじり寄りました。

すると、たっちゃんは気配を察して、

別の方向へ逃げて行ってしまいました。

 

いったい、たっちゃんは何をしたかったので

しょうか? 私を追いかけたいのか、

あるいは、私から逃げたいのか?

 

それは、最後まで謎のままでしたが、

いずれにせよ、とても楽しいひとときでした。

こんなヘンな真似をする猫は、

私はたっちゃん以外に見たことがありません。

 

こうして、たっちゃんと私の関係は続きました。

長く、長く続いたと思います。

しかし、この世に存命する生き物は、

いつか寿命が尽きます。

たっちゃんも例外ではありませんでした。

最後の日の前夜、たっちゃんは息ができず、

ずいぶんと苦しそうにしていました。

その姿がとても酷かったので、

翌朝安楽死させるつもりでした。

当日朝9時、今まさに獣医に電話を入れようと

したところで、

たっちゃんは息を引き取りました。

たっちゃん、最後は苦しませてごめんね。

あの世でも、楽しく暮らしてね。

たっちゃん。

 

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