ちょっと、映画評論家気取りで書いてみます・・・『アンジェラ』
映画『アンジェラ』がいい。
今なら、ヤフーGYAOで無料視聴が可能です。
私はこの映画の存在を全く知りませんでした。
なので、期待せずに観ましたが、
当初の予想は見事に裏切られました。
監督&脚本はリュック・ベッソン。
氏は優れた映画人であり、
同時に相当な人間通でもあると思います。
この映画のテーマは多種多様ながら、
そのひとつは、『聖と俗』だと考えます。
『俗』の中には、当然、悪も含まれます。
映画の冒頭、借金取りに囲まれる主人公・・・。
これで、この映画はフランス版・『ミナミの帝王』
系か、ありふれた暴力モノかと思いきや、
意外な展開を見せます。
『聖』なる場面に関しては、
特に『鏡のシーン』が秀逸です。
『人に愛されないと、自分を愛すのは難しい』
など、人間の本質を突いたセリフが登場します。
この場面、自分を愛せない人は、
観るのが辛いかもしれません。
いずれにせよ、この『鏡のシーン』は、
映画史上、最も『聖』なるものを感じさせる、
と個人的には思います。
また、主人公の男が橋の上から、
セーヌ川に飛び込むところも面白いです。
(かつて、故岡本太郎さんも、
己の作風が確立できずに苦しみ、
橋の上からセーヌ川に飛び込んだことがある
そうです)
男は飛び込む寸前に、
我が身の不運・不幸を呪って呟きます。
皆でバカにしやがって・・・
死んでやる・・・
ここで、一気にカメラのアングルが移動します。
天から見下ろすように、男の姿を映し出します。
男は天を見上げ、
神に向かって問いかけます。
(自分が死ぬこと)それが望みだろ・・・?
でも、神からの返答は当然ありません。
再度、男は神に問います。
なぜ見捨てる・・・?
なぜ質問に答えない・・・?
この辺り、故遠藤周作さんの著作『沈黙』が
想起される場面です。
かといって、この映画には、
シンキ臭い匂いはありません。
おふざけモードもそれなりにあります。
なので、十分に楽しめる映画です。
また、映画は完全なるモノクロです。
色がない・・・。
このことが、大人のファンタジーとして、
映画を成功に導いています。
パリの街並みの美しさも映えています。